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アニメの感想など

話数単位で選ぶ、2017年TVアニメ10選

この企画って玄人しかやっちゃいけないような気がして、ちょっと気が引けるんですが、せっかくブログをはじめたので書いてみることにしました。並びは関東での放送日順です。

 


ルール
・2017年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

 



昭和元禄落語心中』 -助六再び篇- 第八話

[脚本:柿原優子/絵コンテ:畠山守/演出:久保山英一/作画監督:坂由加里、吉田徹、都築裕佳子、大河原晴男総作画監督:木村友美]

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儚くも愛おしい。それが落語じんせい

「正しく見るためには二度見よ。美しく見るためには一度しか見るな。」とはスイスの哲学者アミエルの言葉ですが、『昭和元禄落語心中』には、まさに二度見ることが躊躇われるような美しさがあります。映像はライブとは違い、何度でも繰り返し再生可能な「記録されたもの」ですが、初見時の得も言われぬ感動を追体験することは、やはり二度と叶いません。

 情緒的なカット割りの中で、時おり秘匿された感情を覗かせる目元。「場」を作り出す音響演出。そっと余韻を添えるED。人の情に溢れたこのフィルムには、確かに温度が宿っていて、それ自体人間の業を肯定しているようにもみえます。

 正直、何話を選べばいいものか、かなり頭を悩ませたのですが、初見時の衝撃という点でいえば、八話の芝浜に敵うものはないだろうということで、八話を選ばせていただきました。

 


冴えない彼女の育てかた♭』#4「二泊三日の新ルート」

[脚本:丸戸史明/絵コンテ:亀井幹太/演出:丸山裕介/作画監督:福田裕樹]

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 原作者が全話脚本を書き、監督が全話コンテを切った『冴えカノ』2期。どの話も非常にクオリティが高く、またどれもどこまでもエモかったのですが、残した傷跡の大きさでいえば、4話に勝るものはないように思います。観終わった後、心の奥に何か焼け付くような感覚がありました。切なさとも美しさとも形容できないあの感覚は、フィルムに宿った言い知れぬ感情そのものなのでしょう。

 詩羽のフェティッシュなカットから徐々に溢れ出る切なさ、そっと光に寄り添う詩羽、倫也の目に映る恵、震える恵の瞳、顔を伏せ無言でペンを走らせる英梨々、その絵を覆い隠す炎。心の奥で静かに激しく燃える何ものかをどこまでも美しく切り取ったこのフィルムの素晴らしさは、やはり言葉に還元できる類のものではないようです。

 


エロマンガ先生』#8「夢見る紗霧と夏花火」

[脚本:伏見つかさ/絵コンテ・演出:若林信/作画監督:小林麻衣子]

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 一つ一つの芝居の表現力の高さに圧倒されます。アバンやラストシーンはもちろんのこと、例えばAパートラストの正宗とエルフのやり取り。セリフに対する反応、それに伴う表情の機微、被写界深度の浅いカットに浮かび上がる横顔、動きと動き・セリフとセリフの間の絶妙な間。まばたき一つに至るまで全てが感情表現になっていて、最後に一言、「バカ」。この時の表情が絶妙で、CMがいい余韻になる。

 カーテンを使った構成も素晴らしく、脚本、演出、作画、どこを取っても非の打ち所がありません。正直、私の乏しい私見でこのフィルムを語るのはいろいろと恐れ多いのですが、ともかく『エロマンガ先生』は私にとって、“人の動きを人が手で描く”ことの素晴らしさを実感させてくれた作品でした。演出・作画についての詳しいことは、他の素晴らしいブログ、サイトや『アニメスタイル012』を参考にしていただければと思います。*1

  


僕のヒーローアカデミア』(第2期) 第23話「轟焦凍:オリジン」

[脚本:黒田洋介/絵コンテ:サトウシンジ/演出:堂川セツム/作画監督馬越嘉彦橋本敬史(エフェクト)]

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『ヒロアカ』には「本当に大事なこと」がしっかり真正面から描かれていて、本当にどこまでも素晴らしい作品なのですが、その話をし出すとそれだけで何万字にもなってしまいそうなのでやめておきます。

 絵コンテが毎週大物ばかりでびっくりする『ヒロアカ』ですが、それに加えて23話は作監馬越嘉彦さん、エフェクト作監橋本敬史さんというとんでもない豪華さ。橋本エフェクトを解説できるほどの知見は私にはありませんが、バトルシーンのラストは圧巻です。上手下手が丁寧に整理されている点にも、賛辞を呈するべきでしょう。極め付きはサブタイトル「轟焦凍:オリジン」を出すタイミング。そうして冷め切らない熱を引きずったままEDに入る。

 フィルムに込められた熱量がどう考えても限界を超えていて、なんかもうテレビが爆発するんじゃないかと思ってしまう。そんなすさまじい30分でした。

 


正解するカド』#10「トワノサキワ'」

[脚本:野崎まど/絵コンテ:原田征爾/演出:田辺泰裕/作画監督:湯本雅子/総作画監督:真庭秀明/CGディレクター:カトウヤスヒロ]

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私はこの宇宙の、一番のファンだから

 何百億年もの時を描いた冒頭4分の映像だけで、十分ベスト10に入るのではないでしょうか。聞き慣れたメインテーマを異化するような音響演出も見事。そして特筆すべきは、不意を突くように差し挿まれるEDでしょう。人と出会い、真藤と出会い、ザシュニナの「正解」が揺らぎはじめる。そんなザシュニナの頭上を、ただ流れる空。

 宇宙の誕生と、徭沙羅花という一人の人間の人生。そしてザシュニナの上を流れ行く空。30分アニメとは思えないほど密度の濃いこのフィルムには、どこまでいっても「途中」であり「無常」である人の営みが、肯定も否定もなしに描き出されています。

 


NEW GAME!!』第6話「あぁ……すごいなあ……」

[脚本:志茂文彦/絵コンテ・演出:山崎みつえ作画監督:板倉健、三島千枝、山野雅明、武藤幹、山崎淳、齊藤大輔、渡辺舞、山崎輝彦、吉村恵、手島行人/総作画監督:木野下澄江、山野雅明]

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 シリアスに振り切ってしまわないよう隅々まで配慮しつつ、見せるべきところはしっかり芝居で見せる。「アニメ」としてどこまでも素晴らしいフィルムでした。

 一見するとかわいらしいだけの青葉が頬を叩く仕草も、何度も入ると意味合いが変わってきます。そしてOP曲をはさんでからの、「あぁ……すごいなあ……」からEDまでのシークエンス。演出設計がとても丁寧で、さすがは山崎みつえさんだなあと。

 Aパートのカフェのシーンも、同級生ならではの距離感が感じられて素晴らしい。ちょっと長めのロングの距離感とかすごくいいんですよね。ゲームに夢中になる2人を嬉しそうに眺めるねねっちの表情や、青葉がカップをつつくカットなんかも印象的。こういうさりげない所作を積み重ねるからこそいいフィルムに仕上がるのだろうなと思います。

ちなみに青葉が涙を拭うあのカットは、藤原佳幸監督がコンテチェックの時に足したそうです。(『アニメージュ』2017年12月号「この人に話を聞きたい」第百九十六回より)

 


ボールルームへようこそ』Heat.11「評価」

[脚本:末満健一/絵コンテ:板津匡覧、原恵一/演出:江副仁美/作画監督:名倉智史/アクション作画監督:向田隆/総作画監督千葉崇洋]

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 仙石要の「踊りてえ」の一言が映像の潜在的なダイナミズムに輪郭を与え、杖を突いた兵藤のステップを合図に、そのエネルギーが一気に解放される。あの一瞬の高揚感。画面から溢れ出る凄まじい熱量。多々良と賀寿の感情剥き出しの表情。多分今年一番興奮したと思います。

百日紅』の縁で原恵一さんが絵コンテを描いていることでも話題になった『ボールルームへようこそ』ですが、11話はAパートが板津監督、Bパートが原さん。Aパートには上述した通りすさまじいエネルギーがありましたが、Bパートは比較的抑えめ。脚本の流れ・感情の流れが素直にコンテに乗っているような印象です。その中でも、丁寧に描かれた泣き顔の芝居と、手で涙を振り払うカットは力強い。背筋を伸ばし会場を後にする多々良の足元のカットも印象的。仙石や天平など、“見守る”立場にいるキャラクターの表情にも深みがあります。

 思い出補正が入りまくってますし、2クール目に入ってからダンスの見せ方が洗練されてきたような印象もあったので、10選に入れるべきは他の回かもしれないとも思ったのですが、ここは論理より情緒を取りました。それぐらい強烈に印象に残っている回です。

 


宝石の国』#5「帰還」

[脚本:ふでやすかずゆき/絵コンテ・演出:京極尚彦/CGディレクター:茂木邦夫]

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 10選のうち2つを『宝石の国』にしようかと思ってしまったぐらい選ぶのが大変でした。散々思い悩んだ挙句5話を選びましたが、明日の私は「やっぱり8話の松本憲生さんプリビズのアクションが一番」とか「10話のカメラワークに敵うものはないな」とか言ってるかもしれません。というか、そもそも「優れた」作品と「劣った」作品とが数直線的に並んでいるなんてことはないわけで、「どの作品も誰かの一番」*2なわけで、このTVアニメ10選企画だって悪平等的な競争原理に則るものではないわけです。

 前置きが長くなりました。5話でまず思い出すのは、Aパートのラスト。情緒的なレイアウトの連続の後、アイキャッチを入れて静かに幕を引く。横たわるフォスに打ち寄せる波の質感が素晴らしく、そこに宝石の光と、美しい劇伴、黒沢ともよさんの圧倒的な演技が重なる。「作画が主、CGが従」のアニメでは成し得ない圧倒的な美しさに、息をするのも忘れて見入っていまいました。

 もう一点強調しておきたいのが、カメラの動かし方の巧みさです。フォスが脚を上げ、カメラが回り込む、あのカットの静と動が入り混じった圧倒的なダイナミズム。“止め”の潜在的なエネルギーと、“動くカメラ”の動的なエネルギーが混じり合い産み出される解放感ともどかしさ。と、かしこぶって言葉を並べていると、なんだか虚しくなってきます。あのシーンの素晴らしさは、やっぱり映像じゃないと伝わらない。セルアニメの魅力とCG技術の利点が互いに作用し合った革新的なフィルムでした。

 


 『Fate/Apocrypha』#22「再会と別離」

[脚本:三輪清宗/絵コンテ・演出:伍柏諭/作画監督:伍柏諭、浜友里恵、りお]

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未来に生きるお前たちは誰であれ、英霊に取っては宝だ。

我々は、お前たちという未来のために走ったのだから。

 正直言って、私はいわゆる「作画回」にそれほど興奮しない性なんですが、ともかくこれはすごかった。アニメ史的な観点から見ても、極めて意義深い回だったと思います。(上に引いたカルナのセリフをメタ的に捉えるとものすごいことになる)

 作画回に興奮しない人が作画回について語っても仕方がないので、(誤読しまくっていると思いますが)SAKUGABLOGさんからの引用をもって、賛辞に代えさせていただきたいと思います。

They don’t exist within their own bubble, but rather have a healthy relationship with those that preceded them, allowing for the betterment of one another. It’s clear that Hakuyu Go is viewed as something of a leader figure among them as well, more so when those involved felt the need to proclaim to the whole world that this is Hakuyu Go, which is a positive in and of itself.The future’s bright if someone as capable at forming connections as him can serve as the bridge between generations.

 

All said and done, this is a landmark achievement that few will forget anytime soon. One that’s not only roused those in the industry already to give it their absolute best, but also one that others believe will link to the future by inspiring a new crop of hopefuls to take the plunge. Keep your eyes peeled, because change is afoot.


彼ら若い世代は決して自閉的な空間に閉じこもっているのではありません。むしろ、彼らの先を行く先輩たちと良好な関係を築き、互いに高め合う機会を得ています。伍柏諭氏もまた、彼らのリーダー的な存在として見られていることは明白です。関係者(温泉中也さん)が全世界に向けて「これがごはくゆだ!」と宣言する必要を感じているのですから、尚更そうなのです。これはポジティブで、確信に満ちたことです。伍柏諭氏のようにコネクションを作れる人が、世代を越えて架かる橋の役割を果たせるのなら、未来は明るい。

 

 つまるところ、これは簡単には忘れられない偉大な達成なのです。その功績は、既に業界にいる人たちを駆り立て、「来年俺もやってやる」と意気込ませただけに留まりません。希望に満ちた若人を奮い立たせたこのフィルムは未来にも繋がっていくと、そう信じる人たちもいるのです。目を逸らしてはなりません。変革はまさに今起こっているのですから。 

 


 『アイカツスターズ! 』第86話「涙の数だけ」

[脚本:待田堂子/絵コンテ・演出:安藤尚也/作画監督:橋口隼人]

別で記事を書きました。

 


その他候補に挙がっていた回、思い出深い回

龍の歯医者

生きることの美しさを真剣に描いた作品だったなあと。前編か後編か選べと言われると非常に困ります。そもそもTVアニメとして括っていいのか微妙なところ。劇場版楽しみですね。

魔法つかいプリキュア!』#49「さよなら…魔法つかい!奇跡の魔法よ、もう一度!」

宇宙規模の壮大な演出、泣かせる気満々の回想シーン、さらに涙を煽る挿入歌。それでも「わざとらしさ」が全くない。時間経過の見せ方も見事。

亜人ちゃんは語りたい』第4話「高橋鉄男は守りたい」

雨を使って原作の魅力を映像に昇華させた構成・演出がどこまでも見事です。映写機の音やフィルムを使った演出も見事にハマっていて、物語に説得力を与えていますし、AパートBパート共にかばんに付いているストラップを使って余韻を残している点も素晴らしい。原作にはない区画線を道路に引き、心の隔たりを視覚化している点にも、賛辞を呈するべきでしょう。本当の本当に最後まで迷って泣く泣く切りました。石井俊匡さんの演出については、検索かけるといくつかブログがヒットするので、そちらを参考にしていただければと思います。

セイレン』#4「常木耀 最終章 ホシゾラ」

遥か斜め上のフェチズム。キスシーンがすごい。

進撃の巨人』Season2 #31「戦士」

アクションとか特効とかいろいろとすごいんですが、特筆すべきはあのシーンだけプレスコにしてるというところでしょうか。

アリスと蔵六』第11話「女王と魔女」

紗名の心をそのまま描いたような背景美術、レイアウトが素晴らしい。絵コンテは桜美かつしさん。

リトルウィッチアカデミア』第25話「言の葉の樹」

(脚本段階ではなかったそうですが)「ニューナインウィッチ」のくだりが素晴らしくて、アニメの未来の可能性を感じさせてくれました。*3芸術新潮』2017年9月号に藤津亮太さんが書いている通り、「魔法≒アニメの信頼を描く同作はアニメ100年にふさわしい作品だった」。*4

デジモンユニバース アプリモンスターズ』#36「総選挙決着!エリに迫る魔の手!」

絵コンテ田中裕太さん。全アイカツおじさんが泣いた。

プリンセス・プリンシパル』#6「case18 Rouge Morgue」/#8「case20 Ripper Dipper」

別で記事を書きました。*

ラブライブ!サンシャイン!!』(第2期) 第7話 「残された時間」

海岸沿いを歩く1年生3人とか、朝の学校のプールとか、とにかくエモい。洗練されすぎてない感じも含めてよかったなと思います。μ’sとの決別という意味でも重要かと。

干物妹!うまるちゃんR』第7話「うまると遊園地」

上坪亮樹さんの演出が素晴らしい。観覧車のシーンに加えて、Cパートの熱に浮かされたような雰囲気と、多幸感溢れる幕引きも印象的。参考:干物妹!うまるちゃんR #7 - boogyman's memo

血界戦線 & BEYOND 』第12話「妖眼幻視行 後編」

アバンから印象的なレイアウトの連続で一気に引き込まれます。劇伴との親和性も非常に高く、アクションも素晴らしい。まさに『血界戦線 & BEYOND』の名にふさわしいラストだったと思います。観終わった時、なんだか本当に、前を向いて歩いていけそうな気がしました。

 


素敵なアニメを届けてくださったスタッフ・キャスト、及び関係者の皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。一年間お疲れさまでした。

*1:参考:『エロマンガ先生』8話のフレーム内フレームと演出について - Paradism
フレームや正面ショット関する解釈が素晴らしいです。

*2:「発表!あなたが選ぶアニメ ベスト100」での松澤千晶さんの発言

*3:ナインオールドウィッチの元ネタはディズニーの黎明期を支えた9人の伝説的なアニメーター、ナイン・オールドメン。

*4:リトルウィッチアカデミア』が未来の可能性を示し、『Fate/Apocrypha』が手描きアニメの不滅性を証明してみせ、『宝石の国』がピクサー等とは違う、2Dと3Dの入り混じった新しい表現を産み出した。そんな2017年は「日本のアニメーション100周年」にあたる年です。