cubic in another

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アニメの感想など

『カードキャプターさくら クリアカード編』のOP・EDについて

 作中では『さくらカード編』から『クリアカード編』まで1年と少ししか経っていませんが、現実世界では18年の時が流れました。その間に撮影はアナログからデジタルになり、画面サイズも16:9に変わり、スタッフ・キャストの皆さんも等しく歳を取りました。その18年の間に積み重ねられてきたものは、『クリアカード編』のフィルムにも様々な形で表れているように思います。

 

OPについて

 まず目につくのがOP。曲も映像も明らかに『プラチナ』を意識していて、18年分のあらゆる変化が詰まっています。

 思えば『プラチナ』で歌われていたのは、「みつけたいなあ かなえたいなあ」と「空に向かう木々のように」上を見つめる一人の少女でした。そこでは「私の世界」は「夢と恋と不安で出来て」いて、空を自由に舞う「鳥」や「風」は憧れの対象として描かれています。

鳥たちは風にのり旅をしてゆく

今日から明日へ

 

伝えたいなあ さけびたいなあ

この世に一つだけの存在である私

祈るように星のように

ちいさな光だけど何時かは

もっと もっと つよくなりたい

 

限界のない可能性がここにある この手に

It's gonna be your world

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 OP映像でも一貫してさくらは上を向いていて、桜の花びらも上へ上へと飛んでいきます。そんな中さくらは、重力に逆らえずに落ちてきたたった1枚の花びらを握りしめ、やはり上を見つめる。カメラも上へと向かっていきます。

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 ところが、『CLEAR』は水が上から下へ落ちるところからはじまり、同じく水滴が落下するカットで終わる。桜の花びらが上へ舞う『プラチナ』とはある種対照的ともいえる映像になっていて、Aメロでも雨が上から下へと、重力に従って落ちています。〈飛翔〉〈下から上〉を感じさせるカットもたくさんありますが、「できるよね」の言葉と共に舞台はさくらの部屋へと移動します。

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 曲自体も、歌い出しのすぐ後から「翼がないなら走ってくわ」という言葉があり、「できるよね」と自分に言い聞かせるように歌う。ここではもはや「限界のない可能性」も「奇蹟」も志向されていません。「鳥」や「風」に対する捉え方も変わっています。

風って 鳥って 私より自由かな

翼がないなら走ってくわ 行きたいところまで

できるよね

Going on!

 この変化——“It's gonna be your world”から“Going on”への変化——に含まれるものはあまりにも広く、「解釈」なんてことをしてしまうのは野暮というものですが、ここにさくらの成長・変化を見ることも間違いではないはずです。中学生になって少し現実を知り、“「思い」が全てを変えてゆく”とまでは言えなくなった。それでも「翼」への憧れはまだ捨てきれない。そんな少しくすぐったい成長。

 と同時に、やはり18年分の変化も否応なく表れてしまう。坂本真綾さん自身も「大人である私が歌ってもOKなラインを探っていくのが大変でした」と語っていて、「翼がないなら走ってくわ」という歌詞についても少し言及しています。*1

カードキャプターさくら』を見て育った大人世代と、これから見る子供世代が、それぞれに解釈できる歌詞にしたいなと思いました。〈翼がないなら走ってくわ〉という歌詞が最初のほうに出てきますが、さくらちゃんには翼があるんです。ここはむしろ、子供の頃はさくらちゃんに憧れていたけど、成長するにつれて、自分は魔法が使えないし、アニメの中の女の子のように、すべてが上手くいかないということもわかってきた大人世代に向けて書きました。それでも、皆さん、〈翼がないなら走ってくわ〉という思いで頑張ってきたのかなと。また、これから成長していく子供たちに向けての、自分なりのやり方で自分の物語の主人公になっていってほしいなという願いも込めました。

アニメージュ』2018年2月号

 

EDについて

クリアカード編』はほとんどスタッフも変わらず、OP曲を歌っている人も同じですから、『プラチナ』→『CLEAR』に表れているものは言うなれば「内部」での変化——作中での時間経過と制作側として関わっていた人たちにとっての18年——ということになります。対してEDは“外部”から見た18年ともいえるようなもので、これによって『クリアカード編』は一層厚みを増しているように思います。

 ED曲は早見沙織さん自身が作詞作曲を手掛けている『Jewelry』。早見さんは元々『カードキャプターさくら』の大ファンで、両親が彼女のことを「沙織さん」と呼ぶらしいんですが、それも藤隆パパの影響だそう。そんな彼女が書いた曲は、サビの最初に「大丈夫」という言葉が置かれていて、「外」から観ていたファンの視点からの18年が詰まっています。*2

あの日描いた憧れを

まだ覚えてる

希望、マゼンタ、恋と夢

諦めない強さ

 

もうこどものままではないけれど

宝物は変わらない

 

大丈夫

信じることがパワー

いまはすこし照れたりしても

ちゃんとわかってる

 

そう

この胸の奥に

輝いてるjewelry

勇気をくれるよ

どんなときも

 これはもちろん次の世代にもいえることで、『クリアカード編』ではじめて『カードキャプターさくら』に触れた子どもたちも、10年後20年後に同じことを考えるのだと思います。なんとなくカラオケに入れてちょっと泣きそうになっちゃったりするのだと思います。それに何より、こういう多層的な厚みが生まれていること自体が、『カードキャプターさくら』という作品自体の素晴らしさを証明している。これからも世代を超えてたくさんの人に愛され、たくさんの人の「宝物」になっていくのだと思います。

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*1:(2/12追記)『ニュータイプ』2月号の坂本真綾さんのインタビューがすごくよかったのでそちらも是非

*2:早見沙織さんは1991年生まれなので、『クロウカード編』放送開始時は小学1年生