cubic in another

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アニメの感想など

「回想」と「繰り返し」(『宇宙よりも遠い場所』の構成美)

 アニメでオリジナル作品をやる場合、監督、プロデューサー、脚本家あたりで企画を煮詰めて、ホン読み(脚本会議)でしっかりシリーズ構成を固めて… という作業を念入りにすると思うのですが、『宇宙よりも遠い場所』はその辺り、相当根を詰めて準備してきたのではないでしょうか。というか、実際いしづかさんと花田さんの2人でかなり念入りにシナリオを練っていたようで(『ニュータイプ』2017年2月号 84-85頁)、その丁寧な構成によって、『よりもい』はとてつもないフィルムに仕上がっています。

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第4話、見慣れたカメラポジションで「不在」を強調 ©YORIMOI PARTNERS

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第1話→第4話、これも同ポジで「不在」を強調 ©YORIMOI PARTNERS

 コンテを発注する際に指示を出しているのか、上がってきたコンテに監督が手を入れているのか、それともただ単に各話絵コンテがすごいのか。そのあたりの詳しい制作工程はわかりませんが、『よりもい』ではかなり緻密にカットが重ねられていて、それによってとてつもないモンタージュが生まれています。とりあえずパッと思いついたところを2つほど引用してみましたが、多分もっといろいろあります。そして、その“積み重ね”によってフィルムに溜め込まれていた高橋めぐみの「淀み」が「決壊し解放され走り出」したのが5話でした。

 その表現力の高さは、例えば回想1つ取っても見事で、文字通りの回想(以前に放送されたもの)の中に、巧く新規カットを混ぜている。そしてそのカットが、巧みに前までの話数と“接続”されてゆくことになります。

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第5話、下の2枚は新規だと思うんですが、記憶違いだったらすいません

©YORIMOI PARTNERS

さらに、この“接続”に追い打ちをかけるのが以下のカット。

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第1話→第5話 ©YORIMOI PARTNERS

ここにさりげなく同ポジを挿むことで、1話から5話まで丁寧に積み重ねてきたものが、視覚印象として完璧に補強される。しかもそれが“夜と朝”。この構成美たるや、もはや恐ろしい。その上、爆発的に作画密度を上げて泣きの芝居を描いているので、その熱量においても「淀みの中で蓄えた力が爆発」することになります。と、これだけでも十分恐ろしいわけですが、加えてここにあのセリフ——1話の一番最初に語られたあのセリフが続くわけです。

淀んだ水が溜まっている

それが一気に流れて行くのが好きだった

決壊し、解放され、走り出す

淀みの中で蓄えた力が爆発して

全てが、動き出す

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©YORIMOI PARTNERS

 もちろん「動き出した」のは、キマリだけではありません。だからこのセリフをめぐみにも重ねる。同時に、1話から繰り返されてきた〈上手から下手へと走るカット〉にも重ねる。「全てが動き出す」ということを、これほど多層的にかつ力強く描き切った映像を、私は他に知りません。

 

 勢いでいろいろと書いてしまいましたが、とにかく『よりもい』は「回想」と「繰り返し」の配分がとてつもなく巧い。“特定の画を特定の時間の中に置く”ということによって、突として“いわく言い難いもの”が表出し、決壊し、解放され、走り出す。そんな瞬間が幾度もあります。

 これはもちろん、その仕掛けに気づくかどうかという話ではなく、以前にあったカットと不意に繋がるような繰り返し(≠回想)のカットを挿んでいるということ自体が、言葉にならない感情を、否応なく観客に喚起させる。それは映像でなければ——もっと言うと、TVシリーズでなければできないことだと思うのです。

 


 『宇宙よりも遠い場所』STAGE05「Dear my friend

[脚本:花田十輝/絵コンテ・演出:澤井幸次/作画監督:日向正樹]