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アニメの感想など

Anime's Future: Naoya Ando – Sakuga Blog 日本語訳

誤訳を指摘していただけると助かります。

原文:

 


 

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今回の記事で紹介するのは、短期間で成功を収めた人ではなく、何人かのベテランのもとで演出家としての腕を磨いてきた人です。本稿では、安藤尚也氏がどのようにライティングを駆使し、アニメーションにリアリティを与えているかだけでなく、子ども向けアニメでファンと批評家両方の目を引くためのクリエイターの苦闘についても簡潔に触れていきます。

 


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  • 名前:安藤尚也
  • 職業:絵コンテ、演出、ライブパート演出、ハリネズミのパパ(hedgehog dad)
  • SNSTwitter

 Anime’s Futureで私たちが取り上げる人は、通常以下の二つのカテゴリーのどちらかに分類されます:一つは、疑う余地なく多大な努力をしていて、かつ短期間で業界やファンを席巻した人。二つ目は、長期間に渡って比較的表に出にくい仕事でスキルを磨き、徐々に人々を魅了するようになった人。言うなれば、この二つから選んでいたわけです。前者については、一度新しい才能が発見されると、皆が一斉に賛辞を送ります。嬉しいことに私たちはその先頭にいます。ですが、事件的なデビューがなくとも、注目されつつある人もいる——彼らに賛辞を送ることも、同様に大事なことです。そういう人は、大きなコミュニティの中で見落とされがちだからです。安藤尚也氏もそうです——彼は西洋のアニメファンには、基本的に知られていません。けれど、日本の子ども向けアニメのファンの間では、注目を集め、親しまれています。低年齢層向けの作品が批評の対象となりにくいことは、考えるべき普遍的な問題ですが、その話はまた別の機会にしましょう。今回は彼の演出的なアプローチに話を絞ることにします。

 安藤氏は、至極普通の形でデビューしました:23歳の時に制作進行としてサンライズに入社し、『ラブライブ!』1期の第2話ではじめてクレジットに名前が載ります。その後、松尾衡氏の元でペースを上げてキャリアを積んでいきます。松尾氏が監督を務めた『革命機ヴァルヴレイヴ』では、制作進行を務めながら絵コンテを描く機会をもらい、いくつかのシーンで演出を担当。最終回でも彼の指導のもと、絵コンテ・演出を担当します。*1 これは、私たちが今までに紹介したような記録を更新した若者と比べると、些か平凡な功績に見えるかも知れません。しかし、早くからこれほどの信用を得ることは、それ自体稀な、素晴らしい事績です。彼は『ヴァルヴレイヴ』の後、『ラブライブ』の2ndシーズンに戻り、また順調にキャリアを積んでいきます。ここで、京極尚彦監督が彼と安藤良氏を弟子として取ったことが、彼に取ってひとつの転機となります。*2 京極監督が絵コンテ・演出を担当した第9話に、彼は演出協力というクレジットで参加しています;現在『恋は雨上がりのように』の助監督として多くの人を魅了している河野亜矢子氏も、『ラブライブ』で育っています。また、昨年末に放送された『宝石の国』でも、並外れて有望なクリエイター(久野遥子氏)が育っています。こうしてみると、京極尚彦氏の才能を見抜く力と指導力には驚かされます。その後、安藤尚也氏は京極監督から学べる限りを学び、制作進行を卒業します。そして、独り立ちした演出家として『ラブライブ』に貢献するようになり、『ラブライブ! μ's Go→Go! LoveLive! 2015 〜Dream Sensation!〜』のアンコールアニメで、いきなり脚本・絵コンテ・演出までを一人で担当します。彼をより一層レベルアップさせたあの作品に出会うのは、まだもう少し先のことです。 

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 2015年、『アイカツ!』にローテ演出として参加したことが、彼のキャリアに再び大きな変化をもたらします。これもまた事件的な出来事ではありませんが、確実に意義のあることです。『アイカツ』で、彼は自分のスタイルを確立していきます。『アイカツ』126話には、微細ながら彼のライティングを巧みに使った演出の素地を見ることができます。*3 彼はこうした演出スタイルをより発展させ、シーンの 雰囲気を決定づける方法として、巧みにライティングを使うようになります。簡潔なハイライトに対する特徴的なアプローチをみても、彼の撮影*4への指示がどれほど 精密かがわかります。彼は計らずも魅力的なカットをいくつか差し挟んでいますが、彼が見せたヴィジョンをまとまった演出として見れるようになるまでには、あいにく何本かのエピソードが必要でした。157話(「小悪魔ハプニング」)が、絵コンテ・演出両方を担当することに慣れるために必要な話数だったとすれば、169話(「ひなきミラクル!」)は彼の青写真を描いていた話数だといえるかもしれません。169話のフレーミングや、ステージとそこに立つキャラクター両方の輝きを際立たせるような人工光の使い方から、彼特有のセンスが伺えます。撮影工程まで演出意図を貫こうとする彼の姿勢がより強まっていることは、言うまでもありません。また、これは余談ですが、安藤氏が自分の力を磨くための場所としてどれほど『アイカツ』が相応しかったのかは、『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』を観ることでわかります。『GATE』で安藤氏は、彼の師である京極監督の助けとなるべく、いくつかのエピソードを担当しています。が、『GATE』での彼の仕事は非常に平然としたもので、到底同じ人が演出を担当したとは思えません——自分を表現するための最適なキャンバスを持つことの重要性が、『GATE』と『アイカツ』の比較からわかります。駆け出しのうちは、尚のこと重要なのです! と、このようなデコボコ道の上ではありましたが、彼のスキルが関係者から注目を集めたことは間違いありません。木村隆一監督が絵コンテを描いた『アイカツ』177話で彼が演出を担当していることからも、それは明らかです。177話は『あかりGeneration』で最も重要なエピソードだといっても過言ではないでしょう。また、これは物語の流れ上必然的にそうなることではありますが、照明がシーンを進める要素を担っているようなカットでは、注意深くディテールを描写しています。何の動作もなしに簡単にオンオフを切り替えられる便利な小道具として、照明が扱われていることはありません。強いパーソナリティを持った演出家は、驚くほど細かな点に執着することがあります。それが癖と結びついている時は特に!

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アイカツ』が終わると『アイカツスターズ*5 が流れてくる。のみならず、安藤尚也氏も面目躍如たる活躍をみせます。早くも最初のOPから処理演出を担当し、佐藤照雄監督コンテの丁寧に組み立てられたシークエンスを、これまで培ったスキルでさらに良いものへと仕上げていきます。その上、いくつか新しい技も差し挟んでいます。彼の持つセンスが失われていないのはもちろんのこと、ここで新しい表現スタイルを獲得していることも重要です。アクティブなカメラワークと動きのあるライティングを掛け合わせていること、絵コンテに新たな要素が加わっていること、そして何より強調しておきたいのは、彼のフレーミングや場面設計の持ち味が、キャラクターワークの文脈において極めて重要な役割を持ちはじめているということです;アニメーションにみられる人の目を引く風変わりな画面には、それ自体に独立した固有の価値があるのだと思います。ですが、そういった画作りは説得力のある物語や作品を貫くテーマと結びついてこそ、より強い影響力を持つ。このことに異論を挟む人は多くはないでしょう。癖の強い演出家だった安藤氏は、キャラクターの一瞬一瞬を的確に表現するために、熟考を重ねて自分の個性を発揮するようになりました。この変化を思うと、アニメファンとして、あるいはアニメのクリエイターに興味がある人として、とても満たされる思いがします。視覚的な独創性が比較的少ない『ラブライブサンシャイン』のようなシリーズに戻った後も、彼の個性は光っていますが、上に述べたような成長を踏まえると、これも納得がいきます。終盤のエピソードのひとつ*6で、 しっかりと 足跡を刻んでいます。

 特徴や癖だけで簡単にクリエイターを定義づけてはいけないと、私たちはいつも訴えてきたので、この件に関する安藤氏の進化には、非常に興味深いものを感じます。彼が美しいイメージを使うところから、個々のシーンをより良くするためにそれを使うところへと上がったのだとすれば、次のステップはハイライトではない標準的なエピソードの全体を作り上げることになるはずです。『アイカツスターズ』の2ndシーズンには、彼のそうした経験が詰まっています。彼は2ndシーズンの一番はじめのエピソードで、堂々とその手腕を振るっています。エルザ・フォルテとヴィーナスアークの紹介を通じて、彼の画面全体に対する熱量は最高点に達します。この新しいライバルと新しい学校の圧倒的な 存在感はこのエピソードを貫くテーマでしたが、もし安藤氏による力強い ヴィジョンがなかったら、単なる物語の構成要素のひとつに留まっていたかもしれません。このヴィジョンは、シーズン中の極めて重要ないくつかのエピソードに続いていきます;無敵とも みえるエルザにローラが挑む86話「涙の数だけ」もそうですし(偶然にも、ローラとエルザは彼のお気に入りのキャラクターです)我らが主人公の手によるエルザの避けがたい 敗北や、それに続くシーンもそうです。彼が武器庫に収めた技術は全て、感情の爆薬が詰め込まれたクライマックスのキーになっています。シリーズ全体に渡る物語の糸の締め括り(96話)は、作品の裏にあるクリエイティビティのひとつの到達点にも見えました。そういうエピソードは、自分のはじめたことに対して回収する責任を感じている彼にとってうってつけです。そうした面がなくとも、彼の担当したエピソードが強い 印象を残していることに変わりはないでしょうが、ひとつの作品にこれほどまでに魂を込めた人の仕事は、より実直なものに感じられ、聴衆のエモーショナルな反応を喚起することにもなるのでしょう。この人の心に響かせる力がやがて注目されるようになり、昨年の末にはメンソレータムのショートアニメ*7 という、かなり変わった形でその手腕を発揮することとなりました。この2分のフィルムは、完璧に観客の心を掴み、想いを響かせることに成功しています。画面上のものを生きていると感じさせるような彼のライティングは、ちょっとした好奇心からはじまったのかもしれません。ですが、今では映像にリアリティをもたせるための多くの手段うちのひとつになっています——これはもちろん、リアリズムに即した表現をしているという意味ではありません。視聴者の心と繋がっている、触れられるという意味です。もしあなたがまだ彼の作品を経験していないなら、このショートフィルムを観てください。彼が注目されている理由が、2分の映像に詰まっています。

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 実のところ、彼が足跡を残したシリーズは、『アイカツ』だけではありません。少し時計のネジを戻しましょう。『プリパラ』での様々なパフォーマンスにも、彼の卓越した仕事ぶりを見ることができます。こうしてみると、彼が女児アニメを愛好しているように見えますが——実際間違いなくそうなのですが——『プリパラ』の祖である『プリティーリズム』シリーズで3シリーズに渡って京極尚彦氏がプリズムショー演出を担当していた*8 ことを考えると、『プリパラ』への安藤氏の貢献は、より感動的な様相を呈するようになります。『アイカツ』の時と同じように、『プリパラ』でも彼はメインスタッフとして仕事をはじめたのではありません:最初に担当したのは79話のめが姉ぇのライブ演出で、それからシリーズ終盤にかけて、コンスタントに「プリパラライブ演出」を担当するようになります——もちろん、京極尚彦氏が絵コンテ・演出を担当した102話(「変幻自在!ジュエルチェンジぽよ♡」)も含みます。そして、やはり『アイカツ』シリーズの時と同じように、『アイドルタイムプリパラ』の開始に合わせて彼はメインスタッフに抜擢されます。こうして、師の足跡を追って歩んできた道筋が、確かな成功へと変わるのです。これは、クリエイターとしての彼のアプローチとは、あまり関連性のないことかもしれません。でも、やっぱり無視できない、心のあたたまるエピソードです。

 子ども向けのアニメで育ったクリエイターが安藤氏だけではないということも、記しておかねばなりません。特に東映アニメーションの低年齢向け作品は、特異な才能を持った演出家を何十年にもわたって育ててきました。そこで彼女ら彼らは、自分の制限や欠点を強みへと変えてきました。ここには言うまでもなく、山内重保氏や『セーラームーン』の奇跡的な制作チームも含まれます。最近では、私が個人的に注目している松本理恵氏も東映で育っています。彼女の『プリキュア』シリーズへの貢献は、著しく見落とされています。『京騒戯画』の監督として注目されるようになった際、彼女が何もないところからいきなり現れたように思ってしまった人も多いのでしょう。これはもちろん、アニメファンを辱めて子ども向けのアニメを観るように促そうとか、そういう意図で言っているわけではありません(とはいえ、純粋に楽しい作品は一度観てみるべきだと主張する用意はいつでもあるのですが)。ただ、少なくとも批評や分析においては、これらのタイトルは見落とされるべきではありません。当分の間、安藤氏は『アイカツフレンズ!』で仕事を続けるでしょう。ですが、最終的に彼が自分自身の作品を監督するようになり、より広く注目されるようになったとして、その時にこれまでの彼の仕事を全て無視するようなことがあっては、あまりに不誠実です。そういう意味で、皆が『アイカツ』を観るべきなのです。絶対に後悔はしません。そうです。求めていたものはすぐそこにあったのです。

 


〈訳者註〉

*1:安藤さんは『革命機ヴァルヴレイヴ』の6話 11話 13話 19話で制作進行、13話 17話 19話で絵コンテ、最終話で絵コンテ・演出を担当。絵コンテ・演出はいずれも松尾衡さんと連名。

*2:安藤良さんは『亜人ちゃんは語りたい』の監督としても有名。最近の仕事だと、『恋は雨上がりのように』4話の演出も素晴らしい。ついでながら、『亜人ちゃん』2話では安藤良さんと安藤尚也さんが連名でコンテを描いていたりもする。さらにいうと、4月にはじまった『アイカツフレンズ!』のOP絵コンテ・演出を安藤尚也さんが、『キラッとプリ☆チャン』のOP絵コンテ・演出を安藤良さんが担当している。兄弟みたい。

*3:アイカツ!』第126話「ぽっかぽか♪オフタイム」は佐山聖子さんが絵コンテ、安藤尚也さんが演出を担当。

*4:原文に註が付いていたので一応。
撮影:デジタル化が進んだ現在においては、ソフトウェア上で背景やキャラクターの素材を合成し、さまざまな撮影効果を加えて、ムービーデータに変換するセクション。 デジタルに移行する前は、背景が描かれた紙の上にセルを重ねて実際にカメラで撮影をしていた『SHIROBAKO』用語集より)

*5:英語圏ではAistarsと略すらしい。

*6:ラブライブ!サンシャイン!!』1期11話「友情ヨーソロー」で、安藤尚也さんは処理演出を担当。絵コンテは渡邊哲哉さん。ライブパートの絵コンテは酒井和男監督。

*7:『大切な家族を包む、その手。』
安藤さんの初監督作品(ご本人は名義上監督なだけとおっしゃっていますが)で、ロート製薬により、2017年の勤労感謝の日(いいふみの日でもある)に合わせて公開された。『「ママへ、いつもありがとう。」子供がくれた、ありがとうの手紙写真投稿キャンペーン』と題されたキャンペーンも同時に展開された。脚註に私情を書き連ねるのもどうかと思いますが、めっちゃ泣けます。大好きな作品です。
リンク:「ママへ、いつもありがとう。」子どもがくれた、ありがとうの手紙 写真投稿キャンペーン | ロート製薬: 商品情報サイト

*8:京極尚彦さんは、『オーロラドリーム』ではプリズムショーディレクター(40話からは副監督)、『ディアマイフューチャー』と『レインボーライブ』ではプリズムショー演出という役職を担当している。